子供の頃、僕は正直あまり勉強が好きではなかった。
というより、ほとんど勉強していなかったと思う。
だから当然、成績も良くなかった。
勉強しない人間が成績良くなるわけがないし、特別頭が良かったわけでもない。
でも、不思議なことに、美術だけは違った。
絵だけは、なぜか描けた。
特に努力した記憶もないし、勉強したわけでもない。
それなのに、美術の成績だけは良かった。
今振り返ると、クラスの中でもかなり上手い方だった気がする。
でも当時の自分にとっては、それが特別なことだとは思っていなかった。
ただ普通に描いていただけだった。
だから逆に、「なぜ描けたのか」は今でもよくわからない。
その後、一度だけ美術系の専門学校を見学しに行ったことがある。
だから全く興味がなかったわけではないんだと思う。
ただ、結局そこには入らなかった。
理由は単純で、その頃の自分には「美術を仕事にする」という感覚がまったくなかったからだ。
絵を描くことに対して、将来の方向性を見出していなかった。
だから結局、社会人になってからは、美術とはまったく関係ない道に進んだ。
今思えば、かなり遠回りをしたのかもしれない。
後になって親から聞いた話では、当時の担任の先生は「この子は美術の方向に進ませた方がいい」と言っていたらしい。
でも僕自身は、そのことをまったく知らなかった。
もしその時、違う選択をしていたら、人生はかなり変わっていたのかもしれない。
ただ、それが良かったのか悪かったのかは、今でもわからない。
とはいえ、完全に離れてしまったわけでもなかった。
30代になってから、僕はウェブデザインの仕事に関わるようになった。
形は違うけれど、「デザインする」「視覚的に表現する」という意味では、また美術的な世界に戻ってきた感覚がある。
だから結局、自分はどこかでずっと「視覚表現」の方向へ引っ張られていたのかもしれない。
ただ、子供の頃の僕は、いわゆる古典的な芸術にはあまり興味がなかった。
美術館にあるような伝統的な絵画や、格式ある芸術作品に惹かれるタイプではなかったと思う。
それは今でもあまり変わっていない。
むしろ、自分が今興味を持っているのは、現代アートや抽象的な表現の方だ。
ただ、僕が子供だった頃は、今のように「現代アート」や「現代美術」が身近に語られていた時代ではなかった気がする。
もちろん存在はしていたのかもしれない。
でも少なくとも、僕の世界には入ってきていなかった。
だから当時は、「美術」というと、どうしても古典的なものとしてしか見えていなかったのかもしれない。
もし今の時代に子供だったなら、また違った形で美術にのめり込んでいたのかもしれない。